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代打 スマート老人の正体

全国の印刷業界で戦う皆様、そして、この『IoT奮闘記』をご愛読いただいている皆様、日頃父がお世話になっております。

今月の『IoT奮闘記』は、いつもの父に代わって、私、息子の中西明日輝がお付き合いいたします。家業の中西印刷に入社して一年目の私に「他業界から来て、感じたところを書いて見よ」との父つまり社長の厳命に逆らえるはずもなく、この度こうして紙幅をいただくこととなった次第です。せっかくの機会ですので、本日は”スマート老人”を自称する父とともに仕事をしていて、思ったことなどを書かせていただきます。
このコラムの著者というだけあって、父はIoTの力で業務効率化という話が大好きです。最近父が拘っているのが、PowerAutomateを用いた自動化です。これは比較的簡単な自動化ツールなのですが、簡単といえども、父ほどの年齢で使いこなしているのは珍しいといっていいでしょう。複雑なフローを組んで、自らの定型業務を自動化している父を見ていると「腐っても『IoT奮闘記』を著す親父だな」と感心いたします。
そんな風に、父のITリテラシを信頼していたある日、父は社長室に私を呼び出したのでした。内線で届いたその声は苛つきを帯び、なにかPCまわりで問題が発生したようです。あのIoT親父が困るとはどんな面倒なトラブルなのだろう? と恐れおののきつつ社長室に向かうと、父は私にこう言いました。

「Teams(電子会議用ツール)で顔が映らん」

ひどくとまどったことを覚えています。父のPCの画面を覗いてみると、その原因はなんのことはない、デバイスの設定ミスでした。RPAを使いこなす自慢の父ですが、どうやらTeamsの設定画面を開けなかったようなのです。

まさか。あのIoT親父が、と困惑していたのもつかの間、その後もそういった単純な設定画面の遷移で混乱する父に呼び出されることが続きました。父が、ありふれた設定画面を開けないことを知った私は、これはなにかあるぞ、と思うようになります。ある日、私は、その原因を確かめてみることとしました。

父を観察してわかったことは二点。一点目は、父が最近のアプリの「常識」に精通していないことでした。昨今ではUIデザインの研究が進んでおり、アプリの設計者は、研究され尽くしたUIデザインにもとづいて画面を設計しています。おかげで私たちはなんとなく画面をクリックしていけば、説明書を読まずとも目当ての画面にたどり着くことができます。

しかし父は、これがどうもわからないらしいのです。たしかに一昔前のソフトウェアには、洗練されたUIはありません。父が慣れ親しんだそれらには、デザインの文脈で画面を設計されたものは少なく、文字で書かれた説明書を読んで使うことを求められるものが多いのです。昔はソフトを使うとはプログラムを組むとほぼ同等でしたから、それが当たり前だったのでしょう。ところが、最近のアプリは説明書なんて読まれないことを見越して、説明書がないか、技術者向けの仕様書じみたものになっています。これが、父を混乱に陥れた原因のようです。

父を観察して気づいたもう一点は、父が自分の興味のあることしか調べないということでした。ド派手な自動化は大好きですが、細かなアプリの操作や設定方法を覚えるのはお嫌いのようです。これが”スマート老人”の正体だったとは?!

 

 

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