IoT自動車
自動車を買い換えた。今回はいろいろ悩んだが、すくなくともガソリン自動車という選択はなかった。選択肢はハイブリッドか、純粋電気自動車。ハイブリッドも魅力的ではあったが、つきあいのあるディーラーに適当なものがなく、もう思い切って純粋電気自動車リーフにすることにした。
電気自動車といっても最新の車種ならば機能的にガソリン車と遜色ない。速度も乗り心地もまったく変わらない。ただし、欠点は航続距離と充電時間である。少しこの点は心配ではあったが、元々自動車でそれほど遠出をするわけではないし、充電時間も自宅に200Vの設備があれば、夜、寝ている間に充電できるから問題はないだろうと購入に踏み切った。
これが大正解。驚いたことにモーターの加速がスムーズで力強い。専門的に言うと低速域でのトルクが強く、V8やV12といった多気筒大排気量のスーパーカー並の加速性能を発揮する。これが実に心地よく、ひさびさに車を運転する楽しさを味わっている。
で、当然IoTおじさんとして興味のあるところはその電子機器としての性能である。電気自動車に限った話ではないが、最近の安全装置や自動運転機能は昔の自動車の概念をとことん変えてしまっている。
安全装置については各種衝突防止や障害物センサーなどてんこもりの仕様にした。若旦那シリーズ以来25年。私も63歳、もう高齢ドライバーの部類であり、安全装置は必須だ。おかげで信号待ちで隣をバイクがすり抜けていくだけでセンサーがけたたましく警告してくれる。過敏な気もするが、守られている感じはする。
自動運転はかなり進んだ。高速道路では一旦セットすると同じ速度で走り続け、前に車がいれば、そのうしろをぴったり追走する。もちろんハンドルも自動制御されハンドルから手を放してもカーブでは勝手にまがっていく。ただ最後の責任は運転者がとれということか、ハンドルから完全に手を放して、5秒すると車が警告を発して自動運転を辞めてしまう。これは機能上というより法制度上の制約だろう。
当然ながら、ネットには常時つながっている。スマホからあらかじめエアコンのスイッチをいれたり、充電を制御したりということが可能となっている。このエアコンの遠隔操作は夏場には本当にありがたい。それだけでなく自宅のパソコンから事前のルート検索や充電器の情報などが手に入る。電費(ガソリン車の燃費にあたる)も綿密に計算したものがパソコンで見られる。これらは、メーカーのサーバーにビッグデータとして蓄積され、今後の開発に情報提供していることだろう。
電気自動車は自動車を根本的に変えた。私たちが子供の頃、名神高速道路が開通した。当時制限速度が100キロだったことに驚いた。が、この制限速度はその後50年間変わらなかった。ようやく最近になって例外的に120キロになったが、その進歩はおそろしく緩慢だった。自動車のエンジンもボディデザインも基本的に変わらなかった。電気自動車は違う。別の側面から大進化をとげて、まったく別物の機械に生まれ変わっていた。おそらくこの先、自動運転が進化すれば、人は運転しなくてもよくなるだろう。自動車に乗ってて「どこそこへ行ってくれ」と自動車に直接語りかけると目的地に勝手に運んで行ってくれ、充電も勝手にやってくれるようになるだろう。
この革命はしかし始まったばかりだ。印刷会社は30年早く、こうした革命的変革を経験した。自動車のボディのように、本も以前と外観は変わらないが、コンピュータによってその製造の中身はまったく変わってしまった。そして、いまインターネットと電子書籍でさらに根本から変わりつつある。その意味で、現在の電気自動車は印刷業界で言えば、まだDTPがようやくできたころのレベルだ。これから、CTPがあって、デジタル印刷があって、そして電子書籍へと展開して外面も変わる。我々は革命の先駆者として自動車業界の先輩づらしてもいいかもしれない。