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スマート老人の逆襲

 家電量販店にて、スマホ特別セールの兄さんに引き留められた。

「スマホはいかがですか。これからはスマホの時代です。高齢の方にも簡単に使える機種もでていますんで、是非手にとってごらんください」
 スマホも一通り普及して、これからは老人がターゲットなのだろう。私はおもむろに自分の先月変えたばかりの最新鋭アプリてんこ盛のスマホを見せる。

「もう、持ってるよ」

 というと、兄さんは明らかに動揺した様子で道を譲ってくれた。

 あのなあ、年寄りを一括りに考えてはいけない。この連載の原点「若旦那コンピュータ奮闘記」以来、もはや四半世紀。コンピュータ知識をふりまわして、老経営者を煙にまいた若手経営者も、もうベテランの「コンピュータ大旦那」になっているのだ。私たちの世代の仲間が集まれば、もう最新のスマホやスマートウォッチの自慢合戦だよ。

 それに、たぶん君たちよりコンピュータは詳しい。昔の電算写植はマウスも画面もないから、コンピュータのかなり深い知識が必要だった。君たちはもう知らないだろうが、プログラムのコーディングができないと使いこなせかった。だから初心者向け言語のBASICなんてお手の物。今でも、クライアントの複雑なデータ整理に生半可なツールではなく、EXCELのVBA(VISUAL BASIC)で書いてしまう方が楽だ。最近のコンピュータのグラフィカルなユーザーインターフェースがかえってなじみにくいぐらいだ。

 我々にとってもスマホは本当に便利でもう手帳もほとんど使わなくなった。スケジュールも全部アプリを使ってクラウドで管理している。さまざまなアプリを入れているが、適当なアプリがなければ自作する。カラオケに曲が収録されてなかった時用に好きな歌の歌詞を書いたアプリとか、最近ではお寺に行ったときのためにお経や真言を書いたアプリまで用意してある。暗いお寺の本堂で目映く光るスマホを眺めて真言を唱える。

「オン・アミリタ・テイセイ・カラ・ウン」

 しかし、上には上があるもので、先日ある会で、矍鑠としてWINDOWS10の問題点について論じる80歳を越えるという老経営者にお目にかかった。元プログラマで、印刷業界のコンピュータ化に希望を感じて起業したお方らしいが、もちろん自宅でもパソコン三昧。そして同年代の奥様もそうだという。聞けば、この奥様、元はキーパンチャーだったというではないか。日本の企業にコンピュータの普及が始まってもう50年。そのころコンピュータを覚えた世代はもう70代以上だ。

 印刷業界も電算写植導入から40年。DTPから30年。当社でも電算写植第一世代はほとんど定年退職された。この第一世代は活版の職人から転身したような人も多かったが、苦労されただけコンピュータ技術が身についておられる。こうした方々は老後の楽しみに、老人会のコンピュータ担当をされたり、ブログを運用されているともきく。

 もちろん、私の同級生でもコンピュータに疎い人は多いし、私より年下でも電子関係はからっきしという人も珍しくない。同世代でも英語に堪能な人もいれば私のようにいくらやっても話せない者もいるが、それと同じだ。どの世代でもどんな技術でも得意・不得意はある。ただ、コンピュータに関しては我々の世代と少し上の団塊の世代とは少し違う感じはする。団塊の世代は仕事にコンピュータが使えなくても生きていけたが、我々から下の世代はコンピュータを使えなければ、社会生活そのものが営めなくなっていた。

 コンピュータ時代の先頭を走ってきた世代がこれからスマート老人になる。これは強いよ。コンピュータにも明るく、社会経験も豊富。本当はコンピュータとアプリが偉いのに自分の実力のように勘違いして偉そうにする若い連中に一泡吹かせてやろうか。もちろん若者にこういう対抗心を抱くこと自体が老害ということは(一応)認識しております。

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