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コンベンショナル印刷

印刷方式の分類については、昔から変わらない。凸版、凹版、平版、孔版の4つである。20年前ぐらいから、これに無版印刷というのが付け加わって5種類になった。無版印刷というのは版がないということだから、名称としては弱い。コピー機の延長とも言えるこれをなんと呼ぶかは本欄でも何度も話題にしてきた。よく言われてきたのは、「オンデマンド印刷」だが、これは印刷の方式ではなく機能から来た名称なので、「プロダクションプリンタ」と言う言葉を使う人もいたし、私は「デジタル印刷」というのを推奨してきた。

しかしデジタル印刷はこれはこれで広い概念である。今やデジタル印刷と呼ぶ物の中にも、固体トナーを使う電子写真方式にくわえ、液体トナーを使う方式も増えてきた。さらに最近では次世代印刷方式としてインクジェットも存在感を増している。印刷の技法として考えれば、電子写真とインクジェットでは印字方式がまるで異なる。凸版と平版の差ぐらいはあるといってもいい。これをデジタル印刷とひとくくりにするのはもはや無理がある。

そうすると、印刷の分類は凸版、凹版、平版、孔版、電子写真、インクジェットということになるだろうか。しかし、まだ感熱方式もあるし、最近では某ナノグラフイック印刷なんていうのもある。分類はどんどん拡がっていく。データを印刷機で受け取ってそのまま印刷する方式全体をデジタル印刷とひとまとめの定義でもよさそうな気がする。

結局デジタル印刷をどこに位置づけるか悩むところだが、ここに来て、印刷方式の分類を根本的に変えるものにお目にかかった。凸版、凹版、平版、孔版をまとめてコンベンショナル印刷とし、電子写真、インクジェット等をまとめてノンインパクト印刷とまとめてしまうというものだ。なるほどと膝を打った。これは意外にいいかもしれない。ノンインパクト印刷という言葉が正しいかどうかはわからないが、この分類は今後の印刷作業工程や営業の実体にもあっている。

この定義を再解釈すると、コンピュータ登場以前からあり、コンピュータがなくても印字できるのが凸版、凹版、平版、孔版のコンベンショナル印刷。コンピュータとともに発展し、コンピュータがなければ駆動することができないのがノンインパクト印刷ともいえそうだ。むしろ、このままノンインパクト印刷をデジタル印刷と言い換えた方がいいかもしれない。

それでは以前の定義と変わらないと思われるかもしれないが、そうではない。以前の定義は凸版、凹版、平版、孔版、デジタル印刷と並列に5分類だったが、この新しい分け方だと、コンベンショナル印刷とデジタル印刷にまず2分類し、コンベンショナル印刷の下に、凸版、凹版、平版、孔版が並び、デジタル印刷の下に電子写真、インクジェットが並ぶ。

もちろん分類などというのはあとづけでいくらでも変わりうる。分類の仕方にもよるし、どう分類しても分類しきれないものもでてくる。1990年代に流行ったCTP とオフセット印刷機を合体した有版オフセット方式オンデマンド印刷機はこの分類でも分類できない。いわゆるコウモリ分類状態が生じるのだ。

それでも分類には意味がある。知識を体系づけておかないと、新入社員や顧客に説明しづらい。印刷への理解を得やすくするためになんらかの分類は必要だ。

いずれにせよ、コンベンショナル印刷とは、よく言ってくれたものだと思う。conventionalとは辞書的には「慣習の、伝統の、陳腐な、従来型の」の意味を持つ英語の形容詞である。ニュアンス的には従来からあり伝統的だが古くさいということになろうか。今までの印刷技術はすべてコンベンショナルにひとくくりかと思うと、やはり感慨深い。電子の旗を降り続けた私もスタートは活版だった。私の印刷人人生ももうコンベンショナルのかなたということになるわけだ。印刷はどこへ行くのか?

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