« 電子メールの崩壊 | トップページ | 魔法の社長 »

還暦の往復ハガキ


 私事、私、誕生日を迎えて60歳、還暦を迎えた。月日の流れるのは速い。ところで年齢はみんな等しくとるわけで、サラリーマンになった同級生もみな60歳。今年は定年だとかまびすしい。それならばと、みんなが還暦と定年を迎えたところで、同窓会をやろうということになった。

 こういうとき、地元に残った自営業者が幹事をやるのは当然の成り行きで、該当者筆頭の私が名簿整理と案内状の送付を引き受けた。でもこうした作業も昔に比べて本当に楽になった。既存の同窓生名簿をもとにEXCELを使って、送付リストを作成し、ハガキ作成ソフトに落とし込めば、一気に案内状ができてしまう。
 さて、ここで考えた。いっつも面倒なのは、ここからだ。往復ハガキにして返事をとっても、そこからまた出欠をEXCELに書き写さねばならない。それならば、いっそ、入力フォームにしてインターネットから直接出欠を入力してもらえばいいのではないか。そうすれば、出欠名簿は自動でできるし、事後の問い合わせもメールベースでできる。

 さいわい、入力フォームは今クラウド上で無料提供しているサイトがいくらでもある。ただ、同級生のメールアドレスがわからないので、とりあえずはフォームのURLを書いた案内ハガキをだすことにした。もちろん、URLを入力するのが苦手という人もいるだろうから、URLをQRコードにして案内ハガキに刷り込む。こうすればQRコードをスマホで読み込むだけでフォームにアクセスできる。これは完璧。すばらしいアイデアと幹事にも自慢した。
 だが、結果は諸氏ご賢察の通り、往復ハガキの時より、返事が少なかったのである。還暦同窓会だからと企画段階ではけっこう盛り上がっていたのにである。そのうちハガキが届きだした。「返事がしたいのだけれど、パソコンもスマホも使っていないのでハガキで出します。ごめんなさい」というものだ。反省しきり。かならずしも、みんながパソコンやスマホを使っているわけではない。

 私たちの世代は、大学のときにすでにパソコンがあり、社会に出てからもそれを使い続けたはじめての世代だ。その後もコンピュータとネットにはまりこんで還暦にいたった。だから、当然同世代のみんながそうだと思っていたが、意外にそうでもない。メールとフォームの方が便利というのは思い込みにすぎなかったのだ。

 それに、ハガキの通知でフォームでの入力を促すというのはむしろ面倒ということもある。往復ハガキだと往信を読んで、ペンを取って返信を出すまでが一連の動作でできるが、フォームだと、案内ハガキを持って、パソコンの前にすわり、URLを打ち込む手間がいる。それをしなくてもすむようにQRコードも用意したわけだが、慣れていない人にとっては操作法から覚えなければならず、助けになっていない。このことを逆から証明したのが、メールアドレスがわかっている人にフォームのURLをメールで通知した場合、返信率が高かったことだ。

 もうひとつ感じたことがある。恩師にはさすがに高齢の方が多く、往復ハガキで出欠を確認したのだが、数多くの返信ハガキにご家族からの「恩師ご逝去」の通知があったことだ。我々が還暦と言うことは、その恩師の世代はすでにかなりのご高齢で無理もないことではある。

 しかし、もしも往復ハガキではなかったとしたら、ここまで御消息がわかっただろうか。ご家族はより対応できず、おそらく、単にフォームへ返事がないだけになっていただろう。紙のハガキは私信とはいえ家族も見ることができる。ご逝去された方へなら、むしろ積極的に故人への私信も読まれる。メールやフォームはあくまで個人を対象とし本人しかつながらないツールたが、ハガキは本人だけでなく家族もつないでいく。

 紙の新聞をみんなで回し読みする家族の絆といったものにも通じるのかもしれない。

« 電子メールの崩壊 | トップページ | 魔法の社長 »

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 還暦の往復ハガキ:

« 電子メールの崩壊 | トップページ | 魔法の社長 »