drupaに思う
drupaに行って参りました。4年に一度の印刷業界最大の展示会。というより、お祭り。drupaで出品された細かい技術情報は他の記事に譲るが、やはり前回のdrupaに引き続き、インクジェットdrupaバージョン2というのがまさに今回を言い表しているだろう。各社からでているインクジェット機は、大判で高速かつ、高品質となってきている。バリアブルはあたりまえで、今や、どんな素材にするか、どれくらい厚塗りできるかなどの付加機能の勝負になってきている。印刷する面は平面でなくともよく、ボールやボトルのようなものにまで印刷できるようになっている。
そしてその延長上にあるのが、今回目立った3Dプリンタだ。デジタルデータを素材に印刷された層を盛り上げて形を作るという意味では、ある意味インクジェットの延長でもある。各メーカーがブースの一部に3Dプリンタを並べていたが、これは前回もあったのかもしれないが、これほど目立つことはなかった。この4年間の大変化だろう。
drupaは現実の製品より近未来の技術展示をする場と言われる。とすれば、数年後には世の中はインクジェットとか3Dプリンタばかりになってしまうのだろうか。今はとてもそんなことにはなりそうもないと思える。だが、ひと昔前、固体トナー系のデジタル印刷機がオンデマンド印刷機と呼ばれていた頃、こんなに津々浦々の中小の印刷会社にまでデジタル印刷機が行き渡るとは誰も思ってもいなかったわけで、やはりそうなっていくのだろう。
新技術の普及というのは、ある日突然起こる。何年かけても普及しないでようでいて、普及するときには一気に変わる。もちろん、普及しないまま消えていく技術も多いわけだが、変化を軽視していると、あっというまに時代から取り残される。それを実感するだけでもdrupaを見る価値はある。
そしてもうひとつ印象に残ったのは、会場でも街でも多くみかけた中国人の姿だ。前回のdrupaでも中国人見学者はいたが、今回出展の方に中国系を多く見かけた。中国系の出展というと前回は粗末なブースに素朴だが安価な機械を並べてというところが多かったのだが、今回は五星紅旗をかかげたブースに結構デザイン的にしゃれた展示や垢抜けた販売員の姿が目立った。彼の国はどんどん発展している。そして中東からだろうか、浅黒い肌に、アラビア文字のパンフレットを持った人にも大勢お目にかかった。石油を掘り尽くす前にあらたな産業を興そうという強い意志を感じた。
翻って気になるのが、見学者に日本人の姿が少ないことだ。これは統計を見ないと正確なところはわからないが、東洋人とみると中国人だったということが多かった。今回のdrupaについては、日本の業界人から「いまさらdrupaでもないよ」と、訳知り顔に言う人が多くいた。卓見ともいえるし、厳しい業界情勢を反映してdrupaどころではないのかもしれない。
正直なところ、3Dプリンタと言われても中小の印刷業者の身で何をどうやればいいのか、迷う。だが、これでは中国パワーに負ける。まだできるはず、まだやることがあると貪欲に新事業を追い求めることで業界は活性化する。実際、高度経済成長期の頃の親父さんたちはdrupaで貪欲に新事業の種を仕込んでいた。
「今、会社が大きくなったのはdrupaであの機械を見たおかげです」
と語る人を身近に知ってもいる。それがなぜ、今の業界人にはできないのか。日本の衰退のあらわれと諦めてしまうのはあまりにさびしい。
もちろん、新しい機械さえ入れれば、会社が繁栄するというものでもない。だけれど、それは昔だって同じこと。数年後の技術を見て、数年後のビジネスを考えるのが経営者だと思うのだ。で、私はこのdrupaで何を見、どんなビジネスを考えたか。それは秘密です。