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縦書きの必然性

 インターネットの世界は基本的に横書きである。だから今、みなさんが目にしているプログは横書きのはずである。ところが、このコラムも単行本にするときは縦書きにする。最新刊『電子書籍は本の夢を見るか』も縦書きである。だから元々横書き用の原稿を縦書きに直した。私の本に限らず、日本では大多数の本や雑誌は未だに縦書きである。科学読み物シリーズとして名高い講談社のブルーバックスも、基本は縦書きだ。相対性理論だろうが、量子力学だろうが縦書きで読む。これは世界では希有な例だろう。

 もっとも横書きを縦書きに直すと言っても、今はワープロソフトの横書き指定を縦書きにするだけで、何百ページでも一気に縦書きになってくれる。だから横書きであろうが縦書きであろうが、技術的には何も気にすることはないようにも思われるかもしれないが、そう甘くない。実は単行本化の第一関門が縦書きへの変換なのだ。

 まず、やっかいなのは、英文。元々横書きが原則のものを縦書きにするわけだから、どうにも困る。XMLのような三字の略語くらいなら、単に全角に置き換えて縦に並べてしまえば良い。ところがWindowsという表記になると、「W」「i」「n」「d」「o」「w」「s」と縦に並べると相当間抜けである。だからカタカナで「ウィンドウズ」と書いたりする。もっともカタカナ化ですべて解決するわけでなく「ウィンドウズ」はまだしも「アクロバット」とか「アンドロイド」ではなんかイメージが違うし、別の意味にもとれてしまう。数字もそうだ。横書きなら2016とさらって書いてしまえば良いが、縦書きとなると2016を横に寝かしたままにするか、「2」「0」「1」「6」と縦に並べる、あるいは二〇一六と漢数字にしてしまうなどの選択肢ができる。漢数字にするとしたって、二〇一六もあれば二千十六もありうる。縦書き化はあらかじめ原則を決めた上で、一個づつ検討する必要がある。縦書きと横書きは別物なのだ。単に、文章を表示だけ縦にしたり横にしたりしてもうまくいかない。

 ところが、電子の世界では縦書きと横書きが理論上は自由自在だ。そして、パソコンもスマホもタブレットも横書きがデフォルトだから、若者は、横書きの画面に慣れてしまっている。新聞サイトなどでも、縦書きの紙面をクリックすると同じ記事が横書きでただちにHTML表示されたりする。電子の世界は読む方のわがままが通る。文字の大きさやフォントもいくらでも変えられる。これが紙の本との最大の違いだ。そして、縦横さえ自由だから読み手は横書きで読みたいと思えば、横書きで読んでしまうだろう。

 電子書籍の世界でこそ縦書き表示は定着してきたが、WEBでは縦書き対応がされてこなかった。縦書きで読もうにも横書きしか表示できなかったのだ。特殊なソフトを使うか、PDFで表示しない限り縦書きはインターネットの世界では使えなかった。これではいくら縦書きの著作は縦書きでといっても、表示すらできなかったのだ。

 確かに、HTML5とCSS3の登場で、縦書きWEB表示は可能なっている。しかし、まだあまり縦書きウェブサイトにはお目にかからない。ブラウザによって縦書きへの対応が違ったりするのでWEB制作者はおいそれとは使えないのだ。これではいくら縦書きが可能と言っても絵に描いた餅だ。

 そうこうしているうちに、横書きにしか馴染みのない世代がどんどん増えてきている。紙の本どころか電子書籍も読まないで、ホームページやSNSばかり見ている層だ。しばらくしたら源氏物語を横書きで読んでもなんの違和感もない世代が登場するだろう。そうなれば、このWEB縦書き指定ですら単に文学史の研究者にしか必要がないものとなってしまう。あるいは文字は意味を表現できればいいのであって、縦書きとか横書きとかの体裁にこだわる必然性はないのかもしれない。

 縦書きというのは紙の本と一緒に消滅する運命なのだろうか。

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