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2015年11月に作成された記事

IGASからDRUPAへ

 私は機材の展示会というやつが好きだ。今まで日本国内に限らず、世界中の展示会にでかけてきた。だから当然IGASとなれば行かないわけにはいかない。今回、少し遅めになったけれど、IGASを堪能してきた。

 先に、見学した人からは「今回は何も見るものがなかった」という声も聞いていたが、やはり行ってみるといろいろ発見があっておもしろい。ただ、あのIGASにして静かだなあというのが第一印象ではあった。さすがに地方の展示会のようにブースが埋まらないと言うことはないが、やはり入場者が少ないし、なにより、印刷の展示会なのに印刷機械が少ない。私がこの業界にはいったころは、それこそ展示会と言えば、工場が引っ越してきたかのような喧噪がつきものだった。うなりをあげて最高速で動くぴかぴかの印刷機械とべたべた貼られた「売約済み」の札が展示会を盛り上げた。この展示会の喧噪を通じて印刷会社は成長してきたのだ。

 静かな展示会は業界の疲弊のあらわれと早合点したくなるところだが、そうではない。つまり印刷機械を高速で回すだけが印刷ではなくなったからだ。今回広いブースを構えていたのは、従来の印刷機械メーカーではなく、コンピュータメーカーである。こうしたブースにはデジタル印刷機が並べられているわけだが、デジタル印刷機とはすなわちプリンタ。一昔まえはコンピュータ機器のひとつと考えられていたものだ。

 また、以前ならトムソンを使うような抜き加工にレーザーを使って焼き切るものがでている。トムソンといえば、巨大な機械が上下運動をし、それはそれはうるさかった。それがレーザーならほとんど無音、チリチリと紙が焦げる音がするだけである。

 こうした機器が正面に出るようになって展示会は静かになった。だから、静かになったのは業界の疲弊ではなく、印刷産業全体の重心移動なのだ。従来の高速大量の印刷産業から多品種少量生産へ、大量に作って大量に捨てるから、必要な物を必要なときだけ刷る産業への転換である。それがまさに静かな展示会の正体なのだ。ここを見誤って、静かであることと入場者の減少を結びつけたのでは業界の将来を見誤る。

 もちろん静かな機械は機械で、熱きバトルが繰り広げられている。いよいよインクジェットも正念場だ。各社の新製品はそれぞれに面白い。この中でどれが残っていくのか。新しい技術が誕生し、成熟して商品化していく過程を見られるのが展示会の楽しみだ。前回のDRUPAでコンセプトに過ぎなかったものが、今回のIGASでは実際に動いている。もしくは参考出品だったものが発売されている。残念なのはDRUPAの前年ということで、本当の開発目標がDRUPAにならざるをえないことだ。いくつものブースで「今回は時間切れだけれど、DRUPAには間に合わせます」という言い訳を聞いた。

 日本のメーカーにはもう少し奮起して欲しいなあと思う。DRUPAの前年ということは、DRUPA以前に発表できる、市場に投入できるいい機会だったと思うのだ。DRUPA前に実績が築けるではないか。それで日本で先行して世界に売り込むぐらいの心意気が欲しい。少々、未成熟な点があったとしても、思い切ってIGASで発表して欲しかった。展示会での新製品が惹句どおり動かないのはみんな百も承知。それでも未来を見たいのだ。

 IGASで新製品がでてこそ、DRUPAとの差違がつけられる。次回からIGASはDRUPAと歩調を併せて3年に一度となるという。世界にはライバルの展示会が増えてもいる。その中でIGASのいや日本の技術力を知らしめるのは、日本メーカーのIGASでの新製品投入ではないのかなあ。

 でも、もうすんだことだ。「DRUPAに間に合わせる」という言葉を信じるなら、楽しみが増えたことになる。あと半年。待ってろよDRUPA。

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