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2015年7月に作成された記事

黄昏のワンセグ

 スマホを買い換えた。3台目になる。初代を買ったのが2011年で、それから例の2年縛りを越すごとに買い換えたから3台目となるのだ。この4年あまりでスマホは爆発的に普及した。若者の間では持っていない人はまずいない。電車の中で、乗客全員がスマホを眺めているのもありふれた光景になった。スマホは電話である以上にパソコンであり、電子書籍であり、携帯音楽プレーヤーであり、テレビでもある。昔ならいくつもの機械が分担していた機能がひとつに集約されている。

 私は、年の割にはという留保がつくにしてもスマホは使いこなしている方だと思う。ただ、通勤が自動車なので電車通勤者の定番である電子書籍とか、携帯音楽プレーヤーとしてはあまり使っていない。FacebookとかのSNSもパソコンの大きな画面でやるからスマホでは使わない。意外によく使っているのがワンセグである。

 私たちはテレビっ子第一世代で、物心ついたときにはテレビが一家に一台あった。テレビから流れるアニメや音楽番組を空気のように吸って育った。だからちょっと暇になるとテレビを見たくなる。そんな私たちにワンセグは最高のメディアだった。いつでもどこでもテレビが見られる。良い時代になったものだ。

 ただ、今までのワンセグには不満があった。電波が届かない地域が多すぎるのだ。タクシーの中で見ているとビルの陰にはいるたびぷつぷつ切れる。室内ではまず見られない。これではテレビとしての機能を果たせない。

 スマホは更新するごとに便利になっているから、今回のスマホ更新の期待はワンセグの受信能力の向上だった。これだけ進歩の速い移動体通信の世界のこと。今度こそ、ビルの陰の電波の弱いところでも受信できる感度の高いワンセグ機能が搭載されているだろうと。

 あにはからんや、むしろワンセグ機能は低下していた。ワンセグを見るのに一々イヤホンジャックにアンテナをいれろという仕様だし、たとえアンテナをつけても前より感度は悪くなっていた。
 あるいは初期不良かもしれないと事情を聞きに行った。これがなんと。

「最近はメーカーはワンセグには力をいれてないんですよ」

というのだ。さらに続けて、

「このごろの若い人はテレビ見ません。ユーチューブとかですませます。また映画などもネットを通じて有料配信されるようになっています。だからネット機能は充実させる方に向かっているのですが、ワンセグはもう開発していない」

とのたまうではないか。

 今までスマホでユーチューブなど考えたこともなかった。そんなもの使いものになるまいと思っていた。だがそう言われてスマホでユーチューブを使ってみると美しい画像と音声が流れてきた。それにユーチューブに限らず、いろんなサイトから大量の動画や音楽が発信されている。これならワンセグなど必要ない。それに、有料配信であれば、スマホキャリアにもなにがしかの利益にはなる。これでは無料放送のワンセグなど見せたくなくなるだろう。もちろんスマホは電子書籍としても使える。

 ワンセグの黄昏はインターネットの破壊力がテレビさえ駆逐しだしていることを物語っている。
 これでは印刷などひとたまりもない。少し以前は、パソコンや電子書籍端末を全員が買うことはありえないから、安価な本や雑誌がまだまだ選ばれるという意見もあった。だが、いまやスマホをほとんど全国民が持つ時代だ。読みたければ、見たければそこにスマホがある。それを使えば良い。

 もちろんスマホを使えない情報弱者のために本は必要だという意見もあろうが、それではスマホのおこぼれを拾っているだけでしかなく、産業として悲しい。

 印刷がワンセグの轍をふまないためにネット時代の印刷はその役割をとことん考え抜く決意をしなくてはなるまい。

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