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2015年6月に作成された記事

FAXの黄昏

 そういえば、最近FAXを使っていない。顧客や協力会社との連絡も電子メールばかりになってしまった。少し前まで電子メールでは文字テキストしか送れないので、画像が必要な時はFAXということもあったが、今や添付ファイルという便利なものが使える。

 だいたい紙にプリントアウトそのものをしなくなった。WORDで文書を作って、その中に必要な画像を貼り込んで、それをそのまま添付ファイルで送る。いったんプリントしてFAXなどという面倒なことをしなくてもいい。

 IT系の会社では請求書すら印影つきのPDFで送ってくる。最近、これにならって、こちらも請求書をPDFにしてそのまま添付ファイルで送ることがある。もちろん、顧客の了解を得ての上だが、あまり断られることはない。

電子メールの発達で、まず郵便が減り、次はFAXがなくなろうとしている。これには感慨深いものがある。私たちが社会に出た30年ぐらい前は、FAXこそがニューメディアだったからだ。手紙で郵送なんて古いと、文書をバンバンFAXで送った。FAXを使い慣れないおじさんたちを尻目にいろんなFAXの利用法を考えた。FAXの同報機能を使って何人にもFAXを送るFAXニュースなどというのが、最先端の使い方だった。印刷業界の若手勉強会の情報交換にこのFAXニュースを使って、さも新しがっていた。

 版下をFAXで送るというのもやった。もちろん、当時のFAXの品質では版下はそのまま送っても製品にはならないから、写植を拡大出力し、それを送って先方で縮小して版下として使うのである。結構使えた。ただゴミも拾ってしまうので、オペイクが大変だった。(オペイクなんて単語ももはや死語だ)

 幸いなことに、FAXはおじさんたちもすぐ慣れた。電話番号を押して実際の紙を送るという単純なものだったから、なんどかやっているうちにFAXは誰でも使いこなせるようになった。そして一般家庭でもFAXを使いだし、FAXで通信添削教材とか、町内会のお知らせとかがやってくるようになり全盛期を迎える。

 しかし、FAXには事故も多かった。最大の問題は間違いFAXである。重要な文書をFAXで間違ったところへ送ってしまうというやつだ。笑うに笑えないような文書を間違った宛先に送ってしまったり、こちらにもまったく覚えのないところからFAXが送られて来たりもした。よくあったのは短縮ダイヤル機能が裏目に出るという奴だ。番号だけでは覚えにくいので、オフィス機ではワンタッチで特定の宛先に送れる機能がついていた。これをつい押し間違えるのだ。ワンタッチで関係ないところへ関係ない文書が送られてしまう。一番悲惨なのは、そうしたワンタッチボタンに件の同報FAXが設定してあると、いっせいに関係ない文書が関係ない何十件にも送られてしまう。

 電子メールにも間違いメールはありうるが、取り消しも不可能ではないし、どこに送ったかをあとで確認出来るから自分で気づくのも速い。謝罪もすぐに送れる。その上、添付ファイルにパスワードをかけるという技法が発達して誤配送による危険性は飛躍的に小さくなった。電子メールの添付だとFAXのように画像劣化もおこらない。

 段々と、FAXの利用は減っていった。とどめをさしたのは個人情報保護法だろう。間違いFAXによる個人情報漏洩事件があいついだ結果、個人情報に敏感な会社はFAXを使えなくなった。当社もそうだ。FAXは受信用にはあるが基本的に送信には使わないように指導している。一時よくあった校正FAX送りも、PDF送りにとってかわられて廃れた。

 こう考えると私たちの世代はFAXというニューメディアがオールドメディアになる過程をつぶさに経験したことになる。

 FAXは情報は紙で送るという時代と電子で送る時代のあだ花だったのかもしれない。

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