« 2015年3月 | トップページ | 2015年6月 »

2015年5月に作成された記事

印刷けんぼ

 印刷業界関係の方はご存じの通り、全国印刷健保が解散した。これからは印刷会社は協会けんぽに加盟することになる。印刷業界ではもはや健康保険も賄えなくなったわけで、業界の衰退を象徴する非常に悲しい話だ。なお東京ではそのまま印刷健保が存続するらしいので、これは地方に限った話ではあります。
 
 さてIT奮闘記がなんで、健康保険の話なのかといぶかられる方も多いと思う。

 タイトルを見ていただきたい。印刷けん「ぼ」になっているのだ。誤植である。けん「ぽ」と書くべき所けん「ぼ」と書いてしまったのだ。実はこの誤植、私が社内報の原稿を書く際、実際起こしてしてしまった誤植で、『本の品格』の野村保惠先生ならなんと嘆かれることだろう。「医者の不養生」「紺屋の白袴」に並び、「印刷屋の誤植」という言葉があるぐらい不名誉のことだ(嘘ですよ)。

 社員からも大いに冷やかされたわけだが、この誤植はキーボードの構造上しかたがない。「ほ」の次に打つ「゜」のキーは隣に「゛」があって非常に間違いやすい。このミスは私はしょっちゅうやっている。間違うと「ばびぶべぼ」が「ぱぴぷぺぽ」になってしまう。「ぱ」行はちょっとユーモラスな語感をもつものが多く、なんか非常に間抜けな誤植となる。

 ところが社員から「なんでこんな誤植が起こるのか不思議でたまらない」と言われた。逆に私はそちらが不思議だった。こんなもの誰がやったっておこりやすい誤植だ。日本語キーボードの欠陥のひとつでもある。
「だってBOとPOだと全然キー位置が遠いじゃないですか」
と言われて、はっと気がついた。

 社員はローマ字カナ変換を使うからなのだ。聞いてみると、古くから入力をやっているような社員以外ほとんどローマ字カナ変換を使っているようなのだ。

 目から鱗とはこのことだ。私は日本語を入力するときは、私がそうだから、当然、ほとんどみんながカナキーを使っていると思っていた。ローマ字カナ変換なんてタッチ数が2倍に増えるだけで効率が悪い。ローマ字カナ変換があるとは知っていたが、ほとんど使われていないと思っていた。入力のときに設定を間違えてローマ字カナキー入力モードに偶然変わってしまうことがあるが、これが煩わしいことこの上ない。どうせ使わないんだから、こんな機能なくせばいいのにと思っていたぐらいだが、さにあらん。すでにカナキー派はごく少数らしい。

 私たちが、パソコンをはじめた30年前、キー入力速度は切実な問題だった。なにせ当時のパソコン通信は1分10円。それでチャットをやっていたわけだから、キー入力は速くなくてはいけない。一文字ツータッチなんて考えられなかった。だから今はもう歴史の彼方に去ってしまったが、早打ちの得意な親指シフトキーボードなんてものもあった。この使い手を親指シフターというのだが、彼らが幅をきかせるなか、当時JISカナキーで親指シフト並の速度をだす、JIS乱れ打ちの「若旦那」といえばちょっとは有名だったものだ。今でもその能力はこの原稿を入力するのに有効に使わせていだいております。

 今の人は、「英文キー」以外に「カナキー」を覚えるという発想はないらしい。そもそもそれほど大量に入力しないから必要ないのだ。データはコピペしたり、友だちとのゆりとりはスタンプですませたりするからなおのことだ。そういえば、会社から原稿入力というセクションが消えて久しい。実際角川アスキー総研の調査ではもはや93%がローマ字カナ変換という結果がでている。20代だと96%にのぼるという。

 時代はめぐった、私のようなカナキーでパソコンを始めたパソコン第一世代はもはや還暦に近い。ただ私の世代はもういまさらローマ字カナには戻れない。親指シフトキーのようにカナキーがなくならないことを祈るばかりだ。

« 2015年3月 | トップページ | 2015年6月 »