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2012年12月に作成された記事

たかが名刺されど名刺

 名刺はビジネスマンの基本である。初対面の人に名刺を出して挨拶するというのはもう社会常識として誰も疑うことがない。全国でいったい1日どのくらいの数の名刺がやりとりされているのだろうか。厖大なものになるはずだ。そして、日本でやりとりされる名刺のほとんどんが印刷会社の製品だろう。

 名刺は年賀状と並び印刷会社の基本である。印刷業界の諸先輩から「名刺の印刷から大きな仕事につながる」と言われ続けてきた。それだけではない。大事なお得意様の名刺をミスしたら、そのお得意様の仕事そのものがなくなるかもしれない。印刷会社の仕事は名刺に始まり、名刺に終わる。

 もちろん、印刷会社の社員自身も名刺を配る。印刷会社の同業会などでもお互い名刺の交換から始まるのは当然のならい。一度懇親会に出たりすると大量の名刺をいただく。

 そしてこれが凝っている。印刷会社の名刺は、それ自体が印刷見本のようものだから無理もないのだが、濃い色の地に白抜きなどは序の口で、イラストに文字が埋没していたり、透き通っていたり、光ったり、3Dで文字がうきあがったり、最近では、ARを使ったものまである。かくいう私どもも名刺自体がCD-ROMになっていて、パソコンにいれると会社案内が流れるというのを作ったことがある。

 みなさん名刺にアイデアを競ってらっしゃるのはいいが、最近、もらう名刺はシンプルな方がありがたいと思うようになってきた。

 名刺をスキャナで読んでOCRで自動的に名簿データベースを作るというソフトを使いはじめたからだ。これは本当に便利である。一度でも名刺をもらうとデータベースに情報がたまっていく。検索には特に威力を発揮する。講演会でお会いして名刺をもらった人から、何ヶ月もたって突然電話がかかってくることがあるが、こういうときでもデータベース化してあれば、いつどのような状況下で会った人なのかということがすぐにわかって対応がとれる。

 このとき迷惑なのが凝った名刺なのだ。OCRは最近性能がよくなってきているので、活字体できっちり印字してあれば、滅多に読み間違うことはないが、凝った名刺はうまく読んでくれないのである。イラストとか透明とか、3Dの名刺だと、まずそのままでは読んでくれず、スカタンな文字の羅列と認識してくれる。そこまで凝ったものでなくても、会社名がロゴマークで印字されていたり、しゃれたつもりなのか、ひどく隅によせてデザインされていたりすると、会社名を名前に、名前を会社名と間違って認識してくれたりする。

 OCRで読むという点から考えると、名刺は昔ながらの、楷書体で真ん中に大きく名前、右肩に肩書き、左下に住所と電話番号というのに限るのだ。

 読めなかった名刺はどうするか、手入力しかない。どうにもスカタンな名前が表示されているのを消して、目で読み取った文字をデータベースに入力していく。1枚2枚ならいいが、大量にあるとうんざりする。

 少し前、名刺ではなくて携帯電話の赤外線通信で初対面の人と個人情報の交換をする時代になると言われたこともあったが、これだけスマホが普及する時代となっても、ビジネスシーンではそんなことにはなりそうもない。やはり名刺は廃れないだろう。だとしたら、OCR前提というのはありうる方向だと思うのだ。全く凝るなとはいわないけれど、人間の目にも優しく、そして機械にも読み取りやすい、そういう名刺のデザインができないものだろうか。もしくは、ARとかQRコードを発達させて、個人情報がそのまま機械にはいるようなことでもいいと思う。

 たかが、名刺、されど名刺。IT時代にどんな名刺がよいのか、ちょっと検討する必要はありそうだ。その前にOCRの能力が向上して凝った名刺でも読めるようになる方が早いかもしれないが。

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