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2012年10月に作成された記事

PDFではなぜだめか

 和文オンラインジャーナルがついに現実のものになった。日本のオンラインジャーナルの総本山J-STAGEで、日本語学術雑誌のフルテキストオンラインジャーナルが初掲載になったのだ。とにかく、ここを見て欲しい。
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjgs/-char/ja
 と言っても、この電子書籍時代「何を今更」と言われるかもしれない。和文であっても、オンラインで提供される学術雑誌など巷にあふれているではないかと。しかし、よくよく見て欲しい。そうしたオンラインの和文学術雑誌の本文はPDFでしか供給されていないはずだ。
 英文のオンラインジャーナルは、すでに10数年前から、PDFではなく、ブラウザ画面上でHTMLで画面に表示されるフルテキストオンラインジャーナルになっている。英文誌はHTML、和文誌はPDF。この時代が日本では長く続いてきた。実は、国際的にはPDFによる雑誌データ提供はオンラインジャーナルとは言えない。これはあくまでジャーナルアーカイブだ。紙の本を画面上でも読めるようにしただけのことだ。もちろん、これだけでも紙オンリーの時代に比べて格段に進化しているのは間違いないが、PDFではもはやオンラインジャーナルとしての役目は果たせない。
 PDFではなぜだめで、フルテキストオンラインジャーナルでなければならないのか。世界の大勢がなぜPDFからフルテキストオンラインジャーナルに向かっているのか。
 まず第一に、PDFはあくまでも紙の印刷イメージを画面の上に流しているにすぎない。だから、紙でのレイアウトに特化しており、画面の上では読みにくい。二段組の雑誌などは画面の上で目線を行ったり来たりしなければならないし、頻繁にスクロールを繰り返さねばならない。また、1ページ単位の表示のPDF画面ではデバイスによって不適切な表示となることがある。スマホでPDFを読もうとすれば、1ページまるごとの表示など字が小さくなりすぎて意味がない。逆に横長画面のPCでPDFの縦長のページを表示すると左右に無駄な余白ができ、しかも表示が小さい。この点、フルテキストオンラインジャーナルでは、画面によって適切な表示が自動的に切り替わるし、読む側で好みにあった適切な表示を選択することも可能だ。
 そして、PDFは当たり前だが、テキスト形式ではない。表示するのにAcrobatなどのソフトがいる。これでは検索エンジンが、テキストの内容まで深くはいっていけないし、検索エンジンが拾いやすいように、メタデータを与えておくということもできない。オンラインジャーナルの最大の利点は、全世界から、論文単位どころか、章単位、図表単位、キーワード単位で検索することができることだが、PDFではこれができない。
 その上、PDFというファイル形式自体がいつまで利用できるかわからない。今まで、数多くの文書管理ソフトやワープロソフトがあったが、その規格が廃れてしまえば、そのファイルは読めなくなってしまう。「松」や「Oasys」のフロッピーが今では読めなくなっているように。PDFがそうならないという保証はない。その点、「テキスト」であるフルテキストオンラインジャーナルはファイル構造そのものはシンプルで、未来永劫利用できる。
 最後にもっとも重要なのは、フルテキストオンラインジャーナルは文書が「構造化」されていることだ。形式がしっかり整っているので、将来にわたって学術情報として利用しやすい。
 印刷屋としては、「印刷」のレイアウトすら前提としないフルテキストオンラインジャーナルの流行はさびしいが、世界の大きな流れには逆らえない。むしろ、IT業界がこの分野に乗り出してくる前に、長く「テキスト」と格闘してきた印刷会社がこの領域も包含すべきだと思うのだ。これこそ、「業態変革」ではないのかな。

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