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2012年2月に作成された記事

日本語オンラインジャーナルを目指して

  オンラインジャーナルが普及しだして10年になる。オンラインジャーナルはインターネットで論文などの学術情報を提供するもので、特に欧米での普及が著しい。引用文献がハイパーリンクで縦横に関連づけられている上に、キーワード検索の提供で世界中でどんな研究が行われているか即座に探し出すことができる。逆に言うと、オンラインにない論文は見つけ出されない。読まれないとになる。欧米の出版社の世界では「その論文がネットになければそれは存在しない」とまで言われている。ここで「存在しないと同じだ」というような表現ではなく、「存在しない("does not exist")」と言い切っていることに注目したい。結果として、欧米ではオンラインジャーナル化が急速に進んだ。「ネットになければない」のだから、欧米の学会はこぞって電子化を進めた。日本でも学術雑誌のオンライン化は理系英文誌を中心に進んできた。オンラインなければ世界で戦えないのだから当然だろう。
 これに対し、日本語雑誌のオンラインジャーナル化は進んでいなかった。あったとしても、印刷された雑誌と同じ誌面のPDFをネットに載せる程度だった。しかしPDFで論文をネットに掲載するというのは国際的に言うと、ジャーナルアーカイブであってオンラインジャーナルとは言えない。欧米のオンラインジャーナルは原則HTMLであって、紙の雑誌を画面でも読めるというだけではなく、画面で読みやすいように特化している。例えば、ページという概念がない。一論文は一ファイルであって、下にスクロールしながら読んでいく。またリンクも豊富に提供されていたり、図表も通常はサムネイル表示で必要なときだけ大きくして見せる。オンラインジャーナルは紙の雑誌とは別物なのである。
 活版で作られたような電子ファイルが存在しない頃の雑誌を紙からスキャニングしてPDFアーカイビングするのはそれなりに意味がある。だが、DTPなどで電子的に作られている雑誌までPDFによるアーカイビングで事足れりとしている日本の現状は国際的に見ると非常に遅れた感じがする。なぜなのだろうか。
 ひとつは縦書きのせいだ。縦書きを前提として書かれた論文を横書きが前提の画面で見るのは違和感がある。ただ、確かにこれも重要な理由だろうが、理系誌などは日本語雑誌でも元来、横書きなのだからこれだが理由ではない。むしろオンライン上での蓄積の問題だろう。オンラインジャーナルの最大の利点は相互リンクであるが、これはリンク先が蓄積されていなければメリットがない。リンク先がないのでリンク元たる雑誌のHTML化が進まない、リンク元がないのでリンク先も増えないという総すくみの状態になってしまっているのだ。
 もうひとつ日本語オンラインジャーナルにふさわしい規格が整備されてこなかったということがある。各雑誌がばらばらにHTML化を進めても費用がかかるばかりだが、ある程度共通の規格があれば、その規格を元にしたツールソフト類も整備されるだろうし、サイトを標準化することでコストも下げられる。欧米ではNLM-DTDのようなデファクトスタンダードが早くからあったが、日本ではそのようなものは存在していなかった。必要性がなかったということもあるが、日本語の特性から英文よりはるかに標準化がむずかしいこともある。
 しかし、もはや遅れをとっている場合ではない。日本のオンラインジャーナルの牙城たるJ-STAGEでは、2012年4月以後、全部のファイルをXMLに統一することを発表した。いずれは日本語雑誌も含めて、日本のあらゆる雑誌をHTMLオンラインジャーナル化するという含みだ。また、国際的にもNLM-DTDが日本語も含めた多言語DTDのJATSへと進化した。時は満てり、今年は日本語オンラインジャーナルがブレークしそうだ。

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