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電子出版EXPOに見る印刷屋の未来

 夏の楽しみ、電子出版EXPOに今年も行ってきた。電子出版に関する展示会は、印刷関係の展示会が寂れる一方なのとは対照的に、年々隆盛になっている。今年は節電のお達しのためか、空調もあまり効かず、動く歩道も動かないという状況下、平日というのに大変な人出だった。まさしく熱気渦巻くという奴だ。

 今年は去年あれほど目立っていた電子書籍専用端末の姿が目立たない。目立たないというより、もう電子書籍専用端末それ自身は電子出版の主要に関心事ではなくなっているということだ。特にiPadのようなタブレットタイプの電子書籍は、結局の所、キーボードを取り去ったノートパソコンにすぎないわけで、これはもう電子書籍展示会よりパソコン展示会でお披露目する性格の物になっている。そして電子ペーパーを使ったモノクロ電子書籍端末は進化がない。去年、初めて実物を見て進化に期待したカラー電子ペーパーも液晶画面のタブレットタイプ電子書籍に比べればどうにも見劣りがするレベルから進んでいない。いずれにしても、端末そのものは今年の電子出版EXPOの話題にはならない。

 元気なのは、とにかく電子書籍プラットホームと、電子書籍製作キットのブースだ。電子書籍の販売プラットホームというのはApp StoreやAmazonをひきあいにだすまでもなく、よほどおいしい商売に見えるのか、遅れをとってはならじといろんな会社がひしめいていて、印刷会社も大手から中小までいろいろな会社が参入を試みている。そして、電子書籍を製作するためのキット・ツール類はまさに百花繚乱。

 なんのことはない、電子出版EXPOといっても、電子書籍そのもので儲けようとしているのではなく、電子書籍で儲けようとしている会社相手に電子書籍のプラットホームや製作キットを売り込んで展示会なのだ。もっとも印刷の展示会だって、印刷を展示しているのではなく、印刷で儲けようとしてる会社や人のために印刷機という印刷ツールを売り込んでいるのだから同じ事なのかもしれないけれど。

 さてここから先、印刷会社が何がやるのかということを考える。やはり電子書籍を作ることしかないと思う。電子書籍のツールやプラットホームは、悔しいがわれわれにできる仕事とは思えない。もちろん、逆転の発想から印刷会社でプラットホームや製作ツールに革新をもたらすこともあるだろうし、現に大手では試みているところもある。しかし大多数のコツコツ製造を続けてきた印刷会社にとって、この領域は危険な賭だ。

 結局、各々ツールを使いながら、電子書籍端末に向かって地道に作業を繰り返していくことが印刷屋の仕事となるだろう。読みやすさや美しさを常に意識しながら読者の心に響く組版を続けていくということだ。考えてみたら、これは活版の時も、手動写植のときも、電算写植やDTPのときもかわりない。読者に美しい組版を届けることがまずは印刷屋のすべきことなのだ。

 だが、こんな美しいだけの話ではすまない。よくよく思い出したいのは、WEBページの時も同じようなことをいい、業界あげてWEBページに取り組んだのに、結局WEBページビジネスでは印刷会社が主役になれなかったことだ。原因はいろいろ考えられるが、WEBページを既存の印刷物デザインの延長と考えたからではないか。紙の上での読みやすさと、画面の上での読みやすさは違うし、画面ではブログラムも使ったインタラクティブなページを作れる。こうした進化に印刷業界はついていけなかった。電子書籍ではそうはさせてはならない。電子書籍というあらたなデバイスはいまのところは紙の本を画面上でシミュレートしているだけだが、これから絶対に電子書籍独自の進化をはじめる。その芽をいち早く感じ取って、今度こそ印刷業界を飛躍させねばならない。まだまだ電子書籍の動向から目を離せない。

(11/09/23 原文は7月に書いた物なので旬がすぎてますが)

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