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2011年2月に作成された記事

画面は横長、紙面は縦長

 電子書籍にしてもオンラインジャーナルにしても好むと好まざるにかかわらず、印刷会社は対応せざるを得ないというのが現在の情勢だ。しかし、今のところ電子独特の処理が必要という場面はまだそれほど多くない。電子対応といっても、紙上のレイアウトをそのままPDFにしてクライアントに手渡すことだと理解している印刷会社は少なくない。それどころか、紙のままスキャナで取り込み画像PDFにすることが電子化だと信じて疑わない経営者すらいる。

 この場合、組み版現場としては今まで通り紙の上で読みやすさのみ考えてレイアウトするという姿勢はまったく変えなくてすむ。出力が紙か画面かだけの違いだ。いわゆる写植会社など組み版のみを行ってきた会社などではまったく仕事として変化がないことになる。いわゆる紙のかたちに対応した縦長レイアウトだけを考慮していればいい。

 だが、ここに来て画面でのみ読む読者が増えつつある。電子書籍こそこれからだが、すでに学術雑誌の世界ではオンラインジャーナルが主流となっており、もう10年も前から画面で読むことの方が普通になっている。オンラインジャーナルでは通常のWEB画面と同じく、ページという概念がない。一論文ごとに画面の下へ下へと縦にスクロールしながら読んでいく。確かに、横長のディスプレイ画面で読むときには、ページをめくるより縦にスクロールしていく方が読みやすい。反対に、縦長の紙面を前提としたPDFを横長の画面で読むと読みにくいことおびただしい。特に二段組みの本などは一度画面をスクロールしながら一段の下までいき、そしてまた二段目の上に画面を引き戻さねばならない。

 現在の電子書籍は縦長画面が主流だと言われるかもしれない。それもページごとに独立した画面があり、iPadなどではいちいち画面をタッチしてめくるような動作をしないと次の画面に移れなかったりする。これは、今の紙の本に慣れた読者を電子の世界にひきずりこむためにやむなく紙の本に似せているということもあるし、現在のコンテンツが紙を前提として作られているから、ページごとというような画面の作り方をしておいた方が、今現実にあるコンテンツを利用しやすいと言うこともあるだろう。紙の本をそのままスキャンすれば電子書籍になってしまうのだから。

 だが、いつまで紙という制約の下に成立した書籍形態が紙にせよ電子にせよ命脈をたもつだろうか。人間の目はもともと横長の世界に慣れている。コンピュータの画面がそうだし、テレビも映画もそうだ。一時期、縦長画面のワープロというようなものもあったが、普及したとは聞かない。私も使ってみたことがあるが、不自然だった。人間の目は横に二つ並んでいるのだ。視野が横に広いのは当然だろう。そもそも紙の書籍だって、見開きにすれば横長なのだ。綴じるという紙の制約上、ページというような縦長の紙面が成立したにすぎない。さらに遡れば、冊子体登場する以前にもあった巻物、特に絵巻物は極端に横長である。最終的には、情報端末は横長の画面となってくるのが自然と思えるのだ。

 しかも、紙の本と違って、電子系の書籍は読者の側で体裁を自由に選べる。電子書籍の長所としてよく字の大きさを読者が設定でき、それぞれの読者に最適なかたちで画面表示ができるというのが喧伝されるが、まさに、レイアウトの自由は読者の側にある。極論すれば読者が縦長を選ぼうが、横長を選ぼうが、画面の上で逐次、自動的に美しくレイアウトしなおして崩れないようなデザインが必要と言うことになる。こうなってくると縦長、横長とこだわること自体が無意味なのかもしれない。

 いずれにしても、印刷会社の縦に堅くなった頭を横に解きほぐさないと、これからの業界で生き抜いていくのは厳しそうだ。
 

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