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紙の桎梏と呪縛から解き放たれたとき、電子書籍という未来の地平が立ち現れてくる

鎌田様

お招きいただいてありがとうございます。http://www.ebook2forum.com/2010/03/ebook-and-printing-business-1/
印刷業こそが電子書籍の先頭にあるというお言葉、ありがたくお受け取りします。
私のブログ「電子書籍の抵抗勢力たらん」の反響の大きさに実は驚いています。あの文は出版や電子書籍関連の方々に向けたのではなく、むしろ印刷業界向けに決起を促したものなのですが、一般の反響の大きい割に印刷業関連の方からはあまり反響がありませんでした。ひとつは、印刷業界の勉強不足ということはあるでしょう。そもそも電子書籍についてあまりに知らない。ソフト業界でのクラウドコンピューティングの例をだしておられましたが、得体のしれないものには過度の恐怖感を抱くか無視するかしかありません。印刷業界の場合は恐怖のあまり足がすくんで何もいえないということはあるでしょう。

もうひとつは、やはり出版社への遠慮があると思いますね。なんといっても、印刷業界の最大のお得意様ですし、彼らのご機嫌を損ねることはできません。電子書籍にかろうじて将来の芽を見いだそうとしている出版業界様に向けて印刷業界が反乱をおこすのはなかなか難しいのです。今後出版物の部数も点数も減るのはわかりきっているけれど、まだ注文は電子書籍より紙の本の方がはるかに多いわけで、出版業界をさしおいて印刷業界から発言するわけにはいかんのです。

でも、もう印刷業界人としては出版社と心中するのはいやです。

だからまずは主張すべきは主張させてもらう。印刷したら、当然のようにその原版PDFを要求され、泣く泣く渡すと、それがなんのことわりもなく電子書籍として使われているなんていうことはやはりやって欲しくない。法律的にはどうなんでしょう。昔、活版の時は、版の上に載った内容は著者や出版社のものだが、それを支える鉛は印刷会社のものという了解がありました。だから再版の時は、仁義としても、実質的な技術的制約という意味でも、かならず同じ印刷会社に仕事をまわしてくれた。同じ理屈を敷衍すれば、印刷会社も当然版面に対して権利を主張できる余地があるはずです。そうした権利がちゃんと守られてこそ、対等なパートナーとして出版社や著者と共同歩調がとれるんじゃないですか。

そして、印刷会社は大量に複製することが仕事だと思ってちゃいけない。私は京都の印刷工業組合で委員をしていますが、京都の工業組合でもいわゆる印刷機を回している「印刷工」は少数派です。その多くはDTPオペレーターやデザイナー。かれらにとって必ずしも紙がなくたって生きていけるんです。

ただ、ご指摘のように、あまりに今まで「紙」への依存が大きかった。親父がよく言ってました「紙代は第2次大戦直後と今とではほとんど変わらないのに、その間人件費は100倍にはなっている」。印刷屋は昔、印刷機をまわすどころか、紙の相場を見て、仕入れた紙を右から左へ転がすだけで儲かったのです。紙に刷らないとどうにも儲からない。そういう構造になってます。その中で、組版やデザインは印刷のおまけという意識は強く、出版社も本を積み上げれば、金を払うことには納得してくれるが、組版だけに金をだすという習慣はなかったですね。だから、いわば組版だけに特化してしまうような電子書籍ビジネスは印刷業界はみんなおよび腰です。

でも、結局はビジネスモデルの問題でね。電子書籍ビジネスでちゃんと利益がでればいい。もちろん、われわれもPDFを作ってるだけで、お金がいただけるとも思っていない。電子書籍にふさわしい技能を身につける必要があるでしょう。それぐらいはわれわれも考えている。

電子書籍は印刷業界にとっては業界そのものを破壊しかねない極めて危険な代物です。この危険な代物を下手に出版業界に扱われて、印刷業界もろとも沈んでしまうぐらいなら、電子書籍の抵抗勢力になってやる。まあ私の真意はそんなところでしょうか。

紙の本質とかオンデマンド印刷とか、いろいろ書きたいこともありますが、先は長い。まずは私の決意表明でここはしめくくりましょう。

全国の印刷業者よ団結せよ。紙の桎梏と呪縛から解き放たれたとき、電子書籍という未来の地平が立ち現れてくる。

2010/4/3

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