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2006年2月に作成された記事

ウェブ進化論

梅田望夫「ウェブ進化論」(ちくま新書 2006.2.10)という本を読んだ。これはもう絶対のおすすめ。特にアマゾンの「なか身!検索」に違和感を感じる向きには、相手側の論理を知る上でも貴重な文献だろう。インターネットの最新情報とそれにもとづくメディアの変化を追った本というのはあまたある。私も、この世界をウォッチするものとして、様々な本を読ませていただいたし、私自身「本は変わる!」という著書の中で、紹介もしてきた。しかし、この本はまったく新しい存在に変わろうとしている現在のインターネット(Web2.0)を提示してくれていて、これはもうメディア関係者は必読だろう。

 いろいろな現象が紹介されているが、私のみるところ、インターネットの玉石混交問題をテクノロジーで乗り切ろうとするグーグルという構図が、著者のもっとも主張したいところではないか。インターネットの玉石混交問題とは、インターネットには誰でも作者となれるという面があるが、それ故にメディアとしては、あまりに質の低い情報つまり石が多く、その中から質の高い情報、「玉」をみいだすのが難しくて実際上使い物にならないというものである。インターネットのメデイアにおけるあまりの破壊的影響力故に、本の作り手が主張してやまない理屈だった。

 本当に役に立つ情報がインターネットでただで手に入れられてしまえば、誰も本など買わなくなる。これは誰でもそう思う。情報それ自体はいくらでも手に入れられるがその中で、正確で有用な情報を選んで、読みやすい形で提示するのが本の作者であり、編集者であり、出版社だと思ってきた。ネット時代となって、携帯電子本のようなものが普及したとしても編集という行為は残るというのが、本の作り手の最後の砦だったはずだ。これがグーグルでかわるという。もちろん「玉石混交問題を解決する糸口がITの成熟によってもたらされつつある」と表現は慎重だが。

 その実例としてWikipediaやオープンソースをあげている。インターネット百科事典Wikipediaの実験の紹介は秀逸。「Wikipediaの記述をわざと誤りに書きかえたところ、わずか数時間で修正された」というものだ。インターネットの情報という石は「個」のネット上の営みが集積されることで玉に磨かれていくということなのだ。そしてそれを保証するのがテクノロジーという割り切り。

うーん。落ち着いて反論すれば、いくらでもできそうな気はするけれど、一本とられたな。というのが今のところの正直な印象ではある。

(2006.2.10)

カウンタープロジェクト

COUNTER プロジェクト

Counting Online Usage of NetWorked Electronic Resourcesの略である。オンラインジャーナルの利用統計を世界的に標準化しようというこころみで、イギリスを中心に多くの海外学術出版社が参加している。標準サイトはhttp://www.projectcounter.org/である。
オンラインジャーナルに載った論文がどれだけ読まれているかというのは、そのオンラインジャーナルの価格や、その掲載されている論文の学術評価に密接に結びついてくる。論文の評価については、被引用率という指標が有名だが、それ以上にその論文がどれだけ感心をもって読まれたかというのは大きな指標となる。図書館にしても、実際に読まれているまたは読まれる可能性の高い論文の多いオンラインジャーナルを購入しようとするのは当然で、その意味でオンラインジャーナルの利用統計は大きな意味をもっている。

しかし、その利用統計は標準化されてこそ意味がある。雑誌の販売部数が実売部数とかならずしも一致しないのは「よく売れている」ということ自体に宣伝効果があるからである。販売統計を偽って、または偽らないまでもうまく誤解をまねくように表現して、売り上げをよく見せかけることはよくある。オンラインの場合も、利用統計そのものを偽造するのは論外だとしても、統計の取り方次第で誤解をまねくような利用率を出すことは可能だ。同じ人が短期間に2回クリックするのを2回とそのまま数えるとか、実は見られていない失敗のアクセスを数えるとかするだけで統計は大きくかわってしまう。

こうした問題を防ぐために、利用統計を標準化しようというのが、COUNTER PROJECTである。すでに欧米のおもだった出版社はすべて加盟しているといっていい状況で、COUNTER基準にもとづかない統計レポートはあまり価値がなくなってきている。この状況を受けて、2006年から日本のJ-STAGEでもCOUNTER準拠のレポートをだすとしている。

(2006.2.18)

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