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2005年10月に作成された記事

パーペチュアルアクセス

Perpetual access(永続的接続)である。オンラインジャーナルと紙の本を比べると当然ながら数多くの違いがあるが、こと配布ということに関して決定的に違うのは、一旦所持した情報が永続的に所有できるか否かというところである。

 紙の本や雑誌は一旦購入すれば、その本は永続的にその購入した人が所有でき、図書館も、永遠に閲覧に供することができる。これは古今東西当たり前のことであって、いまさらなにをと言うレベルの話であった。ところが、オンラインになるとそうはいかない。オンラインジャーナルを読む権利は、契約期間のみに発生する。オンラインジャーナルを発行する出版社と契約している間は、膨大なコンテンツを利用することができるが、契約をやめれば一切よめなくなってしまう。発行されたばかりのものどころか過去もみな読めなくなってしまうのである。

 これは契約停止によって読めなくなる場合だが、たとえば、出版社が倒産して、それまでのオンラインジャーナルが皆読めなくなることも考え得るし、倒産にいたらなくても、どこか別の会社に吸収合併されて、公開の方針が根本的にかわってしまうことだってありうる。オンラインジャーナルというのはそういう意味で、永続的には提供が保証されていないのであり、今までの売った以上は情報は所有者の物という慣習が通用しない。

 出版社の側でも、契約期間中に発行されたものは永遠に読めるというようなサービスを提供している場合もある(http://oup1.mcc.ac.uk/faq/for_librarians/perpetual_access.html)が、それでも倒産・合併といった事態には無力である。また、紙の本は500年前の物でも読めるし、それは1000年後でも読めるだろう。しかし、変転の速いコンピュータの世界では500年もの先、そのファイルが読めるという保証がない(古い読めなくなったファイルを未来の考古学者が解読するというSFでもかけそうではある)。

 この問題には、現在のデータを公的機関や非営利財団がアーカイブすることがひとつの解決策と考えられている。私企業につきものの、倒産・合併という危険からデータを救うことが出来るというわけだ。500年先のことを考えて私企業が行動するわけはないので、これはある意味当然のことといえる。オランダ王立図書館(www.kb.nl)のe-depot、米国アンドリューメロン財団のE-journal archiving project(http://www.diglib.org/preserve/introduction.html)などが知られている。

 しかしたとえ、公的機関による保存がなされたとしても、図書館と購読契約を結ぶことで利益をだしたい出版社に対しては、いつどの時点でこうしたアーカイブでの公開を承認するかという問題が残っている。この点ではオープンアクセス運動と似た問題を抱えていることになる。今後まだまだ議論と進展のありそうな分野ではある。

(2005.10.12)

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