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2005年4月に作成された記事

NIHプロポーザル

 NIHが2004年9月14日にだした提案
 「NIHから研究助成を受けた研究の成果は論文の公開後6ケ月以内にPubMed Centralで無償公開することを義務づける。」
 というもので、学術雑誌の流通やオンラインジャーナルのあり方について強烈な一撃をあたえることになった。
 原典はhttp://www.nih.gov/about/publicaccess/にある。
 NIH(National Institute of Health)はアメリカの研究機関だが、配下に27の研究所、や有名なMedLine,PubMedを運用するNLM(National Library of Medicine)を擁し、日本で言う研究機関と言うより行政組織的な意味合いをもっている。ここではまた医学、生物学関係の研究者に対して、多くのGrant(研究補助金)をだしており、アメリカではNIHのGrantを受けることが研究者として自立の証しとも言われている。逆にいえば、NIHのGrantを受けている研究が広範であり、その影響力が大きいということでもある。
 1999年NIHの所長はPubMed Centralを提唱し、独自にオンライン上で研究論文を審査し、WEB上で公開するという案をだした。これに対し、既存の雑誌の意義が否定されると反対の声が上がったのは当然で、その後、PubMedは独自の審査、掲載という過激な案はやめ、既存雑誌をまとめて公開するということで発足している。ここにはBioMed CentralやPLoSなどのオープンアクセスジャーナルを多く含んでいる。
 こうした動きをNIHが行っている背景にはオープンアクセス運動と共通の問題、商業出版社の学術雑誌囲い込みに対する反発がある。さらに、NIHはGrant発給者として自らが助成金をだして行わせた研究でも、その成果が商業出版社の雑誌にのるとそれをさらにお金をだして買わなければならないという、二重負担への疑問がある。これに対しては機関リポジトリなどの運動があるわけだが、NIHは自らの機関リポジトリともいえるPubMed Centralを使った強硬な提案を行う。これが上にあげた、NIHプロポーザルである。
 このGrantをいわば人質にとったNIHプロポーザルには当然ながら大激論がまきおこった。特に、商業出版社は自身のビジネスモデルそのものへの挑戦であり、さまざまな反論をこころみ、また妥協をさぐる動きもあった。Elsevierは発表後1年以内の無料アクセスは容認できないとしたが、Nature(Nature Publishing Group)などは全面支持をうちだしている。
こうした意見をいれ、2005年2月9日、修正されたNIHの方針が発表され、5月2日より実施される。内容は「NIHのGrantを受けた研究成果は発表後12ヶ月以内にPubMed Centralに最終バージョンの原稿を提供し、おおやけに(つまり無償で)提供することを強く推奨される」となっている。(原本は上記サイトにて公開)。原案に対してかなりの後退といえるが、この提案がオープンアクセス運動の強力な援護となったことは間違いなく、出版社の譲歩をひきだした点でも成功といえるだろう。
 NIHは今後とも情勢に応じてあらたな提案をすると言っており、その動向には目が離せない。
(2005.4.28)

オープンアクセス

 オープンアクセスはオンラインジャーナルになった雑誌を読む場合、読者に料金を要求せず、オープンなアクセスを許可しようという運動である。基本的には学術の成果はみなで共有するものであり、商業目的に利用されるべきではないという考え方から発している。
 背景としては、まずオンラインジャーナルの普及がある。紙の媒体と違い、オンラインジャーナルは媒体としての物体(紙)がなく、紙代、印刷代、製本代そして郵送料を読者は負担する必要がない。つまり学会や出版社にしてみれば、いくらアクセスされたとしてもコストは同じなのである。最初のひとつをオンラインに載せさえすればあとはまったく経費がかからない。紙べースでは理想にすぎなかった無料での配布がオンラインでは現実としてたちあらわれてくる。
 もうひとつは商業出版社による学会誌の囲い込みがある。日本では学会誌を商業出版社がだす例というのはあまりないが、欧米では名だたる学会誌が商業出版社から発行されている場合が多い。ただし、商業出版社が学術誌を販売するというのは、欧米でもそれほど古いビジネスモデルではなく、よい学会誌は商売になるということを商業出版社が発見し積極的に学会誌ビジネスにのりだしたのは30年ぐらいの間のことなのだ。商業出版社は合従連衡を繰り返し急速に寡占化をつよめ、学会誌の価格決定力に大きな影響を及ぼすようになった。また出版社は自社の抱える雑誌をまとめて包括契約(いわゆるBigDeal)することを大学図書館等に対して要求するようになり、図書館財政はさらに圧迫されるようになった。
 こうした商業出版社の動きに対し、図書館側が反発するのは当然であり、オープンアクセスという運動が澎湃としてわきあがってきた。
 オープンアクセスを達成する手段としてオープンアクセスジャーナルと機関リポジトリが考えられている。
 オープンアクセスジャーナルは、文字通りオープンアクセスを宣言している雑誌のことで、BioMed Central, Public Library of Science(PLoS)が有名である。BioMed Centralは生物医学分野の査読付き電子ジャーナルを164誌(2005.2)刊行している。 Public Library of Scienceは2000年に公開質問状をだし、出版社に対し、論文が発表されてから6カ月以内に公共のアーカイブに無料提供することを要求した。これはこの後のオープンアクセス運動のモデルになっていく。この要求に協力しない雑誌に対しては、購読・投稿・編集への参加などをボイコットするとし、180カ国34000人の研究者が署名したとされる。
 その後PLoSはみずからオープンアクセス雑誌の刊行にのりだし、PLoS Biology(2003)PLoS Medicine(2004)などが発行され、2005年以後も創刊が予定されている。
 一方機関リポジトリは、学術誌への論文投稿者が所属する機関が、その機関で研究された成果をみずから運営するWEBサイトで公開する物である。これは研究機関が給与をだし、研究費をだしても、その結果が商業出版社発行の雑誌に掲載されれば、その機関自身が金をだしてその研究成果の載った学術雑誌を買わねばならないという矛盾への対抗策である。これには、それぞれの研究機関が利用しやすいよう、さまざまなソフトウエアが提供されている。実際にはさまざまな問題があり、あまり利用されているとはいえない状況にある。
(2005.4.26)

参考 オープンアクセスジャパン

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