NIHプロポーザル
NIHが2004年9月14日にだした提案
「NIHから研究助成を受けた研究の成果は論文の公開後6ケ月以内にPubMed Centralで無償公開することを義務づける。」
というもので、学術雑誌の流通やオンラインジャーナルのあり方について強烈な一撃をあたえることになった。
原典はhttp://www.nih.gov/about/publicaccess/にある。
NIH(National Institute of Health)はアメリカの研究機関だが、配下に27の研究所、や有名なMedLine,PubMedを運用するNLM(National Library of Medicine)を擁し、日本で言う研究機関と言うより行政組織的な意味合いをもっている。ここではまた医学、生物学関係の研究者に対して、多くのGrant(研究補助金)をだしており、アメリカではNIHのGrantを受けることが研究者として自立の証しとも言われている。逆にいえば、NIHのGrantを受けている研究が広範であり、その影響力が大きいということでもある。
1999年NIHの所長はPubMed Centralを提唱し、独自にオンライン上で研究論文を審査し、WEB上で公開するという案をだした。これに対し、既存の雑誌の意義が否定されると反対の声が上がったのは当然で、その後、PubMedは独自の審査、掲載という過激な案はやめ、既存雑誌をまとめて公開するということで発足している。ここにはBioMed CentralやPLoSなどのオープンアクセスジャーナルを多く含んでいる。
こうした動きをNIHが行っている背景にはオープンアクセス運動と共通の問題、商業出版社の学術雑誌囲い込みに対する反発がある。さらに、NIHはGrant発給者として自らが助成金をだして行わせた研究でも、その成果が商業出版社の雑誌にのるとそれをさらにお金をだして買わなければならないという、二重負担への疑問がある。これに対しては機関リポジトリなどの運動があるわけだが、NIHは自らの機関リポジトリともいえるPubMed Centralを使った強硬な提案を行う。これが上にあげた、NIHプロポーザルである。
このGrantをいわば人質にとったNIHプロポーザルには当然ながら大激論がまきおこった。特に、商業出版社は自身のビジネスモデルそのものへの挑戦であり、さまざまな反論をこころみ、また妥協をさぐる動きもあった。Elsevierは発表後1年以内の無料アクセスは容認できないとしたが、Nature(Nature Publishing Group)などは全面支持をうちだしている。
こうした意見をいれ、2005年2月9日、修正されたNIHの方針が発表され、5月2日より実施される。内容は「NIHのGrantを受けた研究成果は発表後12ヶ月以内にPubMed Centralに最終バージョンの原稿を提供し、おおやけに(つまり無償で)提供することを強く推奨される」となっている。(原本は上記サイトにて公開)。原案に対してかなりの後退といえるが、この提案がオープンアクセス運動の強力な援護となったことは間違いなく、出版社の譲歩をひきだした点でも成功といえるだろう。
NIHは今後とも情勢に応じてあらたな提案をすると言っており、その動向には目が離せない。
(2005.4.28)

